東京高等裁判所 昭和32年(ネ)350号 判決
被控訴人の本訴異議は、被控訴人主張の和解調書に表示された控訴人の隔測温度計の送付及び取付債務が、被控訴人の手形金支払債務より先に履行すべき関係にあり、又は少なくともこれと同時に履行すべき関係にあるのに、控訴人は右債務の履行又はその履行の提供をしないから、右和解調書による控訴人の手形金支払請求権に基く強制執行は不当であり、その排除を求めるというにあることは、被控訴人の主張自体に徴して明らかである。
してみると、右和解調書による強制執行に対する被控訴人の異議は、(控訴人の隔測温度計の送付及び取付債務が被控訴人の手形金支払債務より先に履行すべき関係にあるとすれば、)右和解調書の執行力の発生原因である条件の不成就を原因とし、又(右両債務が同時に履行すべき関係にあるとすれば、)右和解調書による執行行為の執行法上の違法を原因とするものであつて、控訴人の手形金支払請求権の不存在を原因とするものでないから、執行文付与に対する異議若しくは訴又は執行方法に関する異議によるべく、請求異議の訴によるべきものではない。蓋し請求異議の訴は、債務者が債務名義の存在を前提とし、その債務名義に表示された実体法上の請求権の不存在を請求の原因としなければならないからである。
よつて被控訴人の本訴請求はその原因を欠くから、その他の点について判断するまでもなく失当として棄却すべく、これと趣旨を異にした原判決は不当であるとしてこれを取り消した。